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2007年11月24日 (土)

創作寓話「蝉(せみ)」平成15:2003年卒業生へ

■創作寓話■

 今日は所用につき記事が間に合いませんので、私の「創作寓話」をお読み願います。

 平成15年(2003年)卒業文集に掲載したものです。

 今までにアップしたものは、左欄のカテゴリー「自作寓話」をクリックすると全部ご覧になれます。未読の方は是非どうぞ。

        蝉(せみ) 

 炎天下、森羅万象(しんらばんしょう)が呻吟(しんぎん)する夏。

 日が昇ると蝉が声をかぎりに鳴き始めた。その蝉に向かって、トンボがしかめっ面(つら)で文句を言う。

 「おいおい蝉君、いい迷惑だぜ。今日はのんびりと空を舞いたい気分なんだ。そんなにわめきたてないでくれよ」

 蝉は鳴くのに忙しくて相手にしない。トンボが憎まれ口をたたみかける。口調もべらんめえに変わった。

 「やい、この蝉野郎、貴様は生まれてから七年も地面の下にうずもれているんだってな。そのくせ地上では七日しか生きられないって話じゃあねえか。

 それが悲し悔(くや)しでわめいているんだったら、てめえ承知しねえぞ。

 悲劇の主人公ぶってわめく奴ぁ、俺ぁ、大嫌いなんだ。おい何とか言え。」

 蝉はトンボの勘違いに笑いをこらえるばかりだった。土中に七年いて地上に出ると七日しか生きられないというのは本当だが、別にそれが悔しいわけではない。

 「トンボ君、君は地中で暮らしたことがないからわからないのでしょうけど、土の中はとても快適なんですよ。地上に出てみると、地上は土中とは反対に生きるのに辛(つら)いところです。まぶしいし、蜘蛛(くも)の巣にからめとられるなど外敵ばかりじゃないですか。

 ところが地中は温度が年中同じだから快適このうえない上、枯葉などが腐食(ふしょく)して有機物(ゆうきぶつ)がいっぱい、栄養満点です。

 土中には、ミミズ君をはじめ仲間も大勢いる。友達の動きが土を伝わって体じゅうに響く嬉しさは何ともいえないものですよ。その喜びをトンボ君にも体験させてあげたいものだ。

 私達が木に留まって日がな鳴いているのは、辛(つら)い地上で生きる仲間同士、励ましあっているだけなのですよ。」

 初めて知った蝉の事情を聞いて、トンボがあっけにとられる中、蝉の泣き声はますます響きわたった。その木陰で、大人が子供に向かって何やら人生訓めいたことをしゃべっている。

 「《地中七年地上七日》これが蝉の人生だ。はかない運命、悲劇の一生。それが蝉さ。それに比べりゃあ、お前は幸せなんだぞ。」

 訳知り顔(わけしりがお)の大人の頬(ほ)っぺに数滴、何やら冷たいものが降りかかったとさ。どっぺん。
 
 ※皆さんも友達と「蝉ってかわいそうねえ、地上に出て一週間で死ぬんだから」と一度は話しあったことがあるでしょう。もちろん私もあります。でも立場を変えてみたらどうなのだろうかと思ってこの寓話を作りました。

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