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2013年3月 9日 (土)

(連載小説)  火文字(12)

小説「火文字」を一ヶ月半も掲載しないままでした。以前に書いたものを写すだけなので、毎日でもアップできると思っていましたが、公私にわたって用が立て込むとなかなか思うようにいかないものです。お詫びいたします。

※左欄カテゴリー「小説火文字」をクリックすれば
 前回まで全部を読むことができます。
 今回から初めてお読みになる方はぜひ(1)から
 お読みいただければと存じます。

次の写真は小説本文とは関係ありませんが、できるだけ今日の内容に合わせて、大倉山商店街と大倉山駅の写真を掲載いたします。平成18年(2006)12月4日の写真です。晩秋から初冬の街の装いが感じられます。

※写真はクリックして拡大画像でご覧ください。

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それでは、以下、小説火文字の(12)をお読みください。

   (十二)

 時計をみると、もう九時が近づいていた。明日の仕事に障る時間でもないが、今夜は日高とこれ以上話しても埒があかないだろう。

「もう帰ろうか。」

 和夫は日高に声をかけた。

「そうですね。」

切り上げ時を待っていたのだろう、日高はすなおに同意した。

「勘定してきます。」

日高がよろよろと立ち上がった。足取りは確かなようだ。

日高は今夜の会話を明日どれだけ覚えているだろうか。

 教師が若いときは、生徒と同世代の共有感覚だけで指導できることもある。でも教師が三十代になれば、生徒はいやおうなく教師に異世代を感じる。中年になった世代の教師が生徒と同世代を演じれば、生徒は嫌悪感を示し、そんな教師から逃げるように遠ざかっていく。

 和夫は中年教師になってから、世代の差を堂々と示す方が、生徒の安定をひきだせることに気がついた。校則違反をした君代に、いま必要なのは、俺が親世代として壁になり、普段はまじめに見えた君代にも「甘さ」があったことに気がつかせ、それを克服することの大事さを説いてやることだと思っている。

 いつのまにか赤ちょうちんの揺れがおさまっている。ああ、そうか、誰かが停めてやらなくても時間がたてばひとりで停まることもできるんだな。当たり前のことに和夫は気がついた。でも、君代にはそんな時間の余裕はないと思いなおした。

日高が、勘定書きを持って戻ってきた。少し多く和夫が持つことにして、外に出ると、秋の冷気が顔にしみた。揺れを停めた赤提灯が客を待っている。和夫と日高と入れ替わりに、二次会とおぼしき客がぞろぞろと入っていった。

日高とは住まいが別方向だから駅で別れた。時計を見るとまだ9時を少しまわったところだ。和夫は自宅近くの縄暖練で独酒だと決めて電車に乗った。

                  (13) につづく

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